ところで、遠路はるばるヒマラヤまで「あいつは何しにいった?」と思われているのでは?とひそかに感じている。今日はそのことをお話しするとしよう。
地球温暖化により陸域氷床が少なくなっている。陸域氷床の現象は長期的には海面上昇につながるが、それよりも緊急に問題なのは氷河の後退によって起きている氷河湖が決壊する危険性をもっていること。氷河湖が決壊するとヒマラヤから注ぐ川が一気に増水し、洪水や橋の流出など人々の生活に直接影響する。こういった問題は世界のあちこちにあるが、とくに氷河後退が顕著なのがヒマラヤということになっている。このヒマラヤで拡大している湖のうち「ツォローパ」という湖はそういった危険性ナンバー1の湖ではあるが、数年前に工事や付近住民への警報装置をつくったことで一段落した。その次に・・・というのがいまいちよく分っていない。ところが、イムジャ湖という湖はエベレストに近く、ネパールでも人気のトレッキングコース。この湖が万一決壊したら、前述、洪水・橋の流出などに加え、世界の最貧国とされるネパールの重要な観光資源を失うことになる。(橋がなくなっただとか、あの未知は危険だとか噂がたてば人が来なくなる)。これは長期的に世界の最貧国を見守る国際社会にとっても大問題。そこで、このイムジャ湖の状況を常にインターネットで世界中で監視し(温暖化問題の現状を世界にしらせ、環境問題に関心をもつ人々を増やしながら)、なにかが起こりそうなとき付近に警報をだすようなシステムをつくろう、というプロジェクトをKO大学が企画した。私はそのお供をしてきたというわけ。
10月30日に日本をたち、タイ経由でネパールの首都カトマンズにつき、カトマンズで3日間で情報や装備を入手し、輸送計画とシェルパ等の手配をし、ネパール4日目からカトマンズから東に数百キロいったところにチャーターヘリで落ちたち、目的の湖に向けてあるきだした。下の写真はあるきだして一週間くらいして目的の湖に到着する数時間前の景色。その日は積雪があり寒かった・・・(なんども雪が舞ったがこの日は積もっていた)。
そんな湖も近くから見たら全体像が良くわからない。だから、高いところに登り湖全ぼうを捉えようと標高6189mのアイランドピークという山に登ることにしていた。したの写真はアイランドピークの山腹のアタックキャンプからみたイムジャ湖の全ぼう。巨大な風呂のようにカタチがシッカリした湖だった。湖面は凍っており、朝にはー20度の気温。昼でも氷点下・・・。
イメージしていたよりも小さい湖。しかも、湖の先端には川できていて、水を排水していたから、「これが洪水の恐れがある湖か?」と正直思った・・・。
さておき、アイランドピーク。この山に登る申請をしているのは3名(登山には許可がいる。許可には金が要る。だからみんな登るというわけにはいかない)。3名でシェルパ2名の援助をうけ深夜3時出発でアタックをかけたが(下山が遅くなると強風が吹いて危険ということで夜登山)、私は酸欠で「これは無理」と判断し、早々と撤退。(無理しないという信条でヒマラヤにいってるので)KOの現役山岳部員は6100mくらいまで行きながら凍傷の危険等を感じ撤退。上りきったのは51歳のKOの先生のみという結果に終わった。
この氷河僕が驚いたのはその氷河湖の作られ方。氷河湖の形成だとか氷河の後退は、夏の乗鞍の雪渓がとけるように、ちょろちょろと雪が溶け出し、そのだいぶ下のところで湖ができているのかと思った。ところが、イムジャは違った。まるで南極の氷が海に崩落していくように、どうやら氷河のしたには既に水で満たされ、氷河の先端は水に浮いているため、どんどん氷河が崩落して湖を拡大しつつ、氷河が後退していた。なんでも90年代の後退速度は40m/年だったそうだけれど、現在は70m/年になっているという。
そんな現在もっとも熱い(話題性のある)氷河にいってきた。
調査隊はの構成は、KO大学5名、CB大学1名(長期出張を許してもらえなかったため途中帰国)と私のKO隊7名に加え、湖に設定するカメラを設置する日本隊3名とネパール隊7名の混成チーム。これにシェルパ3名(シェルパの親分をサーダーという)、ポーター数名(荷物を運んでくれる専門の現地人)、キッチンスタッフ5名でのヒマラヤ行だった。