金華山に集う人々 その3
ヒマラヤで不思議をいくつも体験した。2週間風呂に入らなかった。けれど、何とかご機嫌に暮らしていた。僕は汗かきだ。普通だったら汗をかいてしかたない山登り。けれど、なぜかヒマラヤでは毎日汗をかいた!という記憶がない。汗をかいてシャツを替えたのは一度だけ。なぜだろう。そこで帰国した今、汗をかかずに山に登ることを研究しようと思う(まぁ簡単なこと・・・だと思う。酸欠で早く進めないのでゆっくり登っていたからだろう。だから、日本でゆっくり山登りすればいい?)。もちろん、実験地は金華山。
昼飯を食って実験を始めた。
家から金華山に向かうには、近所の日中友好庭園を横切る必要がある。この公園の入り口の近くには公衆トイレがあるが、今日、そのトイレからサンタクロースが出てきた。スカートをはいた女性のサンタ。ちょっと目をしばたいたが、まぁ、一種のコスプレだろうと理解しようとした。ときどき日中友好庭園では、マニアな写真撮影会が行われているので、それではないかと。しかし、そのスカートを履いた女性サンタの両サイドを、新たにトイレから出てきた2人の女性が取り巻いた。まったく普通のジーパン姿の女性である。奇妙なのが、その2人の女性の背には「登山用の大きなリック」。良く見るとそのサンタの背中にもリック。まさか、子供たちへのプレゼントではあるまい。まさか、金華山に登るのか?良く分らないこの3人。近づいたときに背中を向けていたサンタの正体を確認すべく、チラ見した。あのサンタ、「秋葉系」。彼女たちいったい何者だろう?あの格好で山に登るのか?それとも、人がすくない公園で初めての恥じらいコスプレ体験か?
毎回汗かきながら体育会系の金華山をしている。体に負荷をかけて、脂肪を燃やし、筋肉を鍛え・・・。いつもなら家からでてドア・ツー・ドアで45分。しかし、実験初日の今日は、55分。ゆっくり登って、ゆっくり下ってきた。
下りで爽やかな人たちとすれ違った。小学生4・5年生と思われる3人組だ。休日の今日、友達と集まったとき「今日なにして遊ぶ?」「じゃぁさぁ、金華山行こうぜぇ~!」「一番苦しい馬の背にいこまい!」「おっー!」そんな会話で金華山に来たのだろう。僕が子供の頃よく、「子供は風の子」なんてことをいっていたけれど、いつの間にか子供たちは、そとで遊ばなくなった(確かに世の中物騒だし、テレビゲームなんかもあるし)。昔は風の子だった、この禿親父も、今では寒がりで、「目的・目標がなければ山なんかに登らず」できることなら家でぬくぬくしていたい気分だ。でも、彼ら3人、純粋な気持ちで山に来ている。口うるさい大人たち言われるわけでもなく、自分たちの意思で・・・。彼ら3人のような子供を見て、ちょっぴりノスタルジックになり、ほのぼのした気分になった。「がんばれ未来のアルピニスト」、と心で声をかけてみた。