ブータンから戻って2週間たった。随分前の出来事のような気がする。でも、9月頭から中旬までの2週間、私はブータンにいた。これで二度目のブータンだ。
最初のブータンの印象と今回のブータンの印象はほぼ変わらない。
「家族を愛し」「近隣を愛し」「王様を尊敬し」「調和と伝統を大切にする」それがブータンの最初の訪問時の印象だ。
それに加え、今回は不動の印象が2つ加わった。
「風の国」そして「最小限の国」だ。
なにか、違う・・・。そんなことを思いながら気づいたこと。ブータンには首都であろうと田舎であろうと、街に音楽が流れていない。レストランでも然り。お土産物屋でも然り。ホテルでも然り。無意味な音楽は一切ない。
通りに出ても、車の音もなく(気にならない程度)、クラクションもない。ただ、あるのは風の音。
ヒマラヤを越えて私の耳にとどいた乾いた風が、カラカラと右の耳から左の耳と通り過ぎる。
それがなんとも心地よかった。
急斜面に建つ田舎の建物。その家の庭に設定された古びた木製ベンチ。夕方前、その木製ベンチに腰掛けて、熱心に本を読む女学生。
乾いた大地の大きな岩。その岩陰であぐらをかき一心不乱に読書する老人。
夜になる。街の明かりは、家の明かり。街灯もほとんどない。まっくらな夜のしじまに、人の気配のする部屋にだけ明かりが灯る。
音も・・・、明かりも・・・、多くのものが必要十分の最小限。
仕事でなければ・・・、とても心落ち着く国だと思う。