回想ヒマラヤ5 非日常その2

【夜】
夜いま日本に帰ってきて、部屋の電気を消さずに別の部屋でテレビ見たりしてしまうことがある。前はあまり何も思わなかったが、ネパールから帰ってきたいまは、電気の無駄づかいをするたびに、あのヒマラヤを思い出す。カトマンズ、つまりネパール王国の首都でさえ停電がある。夜中に突然、電気が消えることがあるのだ。また、町には街灯がなく、といってもどこかの国の援助で街灯ができていても、明かりはともっていない。したがって夜の街は行きかう車やバイクの明かり。もちろんネオンなんかはない。
 これが山奥にいくともっと状況は悪い。まず、トレッキングの起点ナムチェバザールという町。ロッジの食堂ではかろうじて読書ができる程度。これが各個室の電気となれば、肌電球が一つあるだけ。裸電球といっても読書はできないくらいの暗いものだ。また日本からもっていったパソコン・デジカメなんかを充電するためのコンセントはない。でも、ナムチェもあとから思えば極楽だった。
 キャンプサイトの5000mに行くまでにはナムチェをでてから3箇所で宿泊をした、テンボチェ(3800m)、ディンボチェ(4300)、チュクン(4700m)。テンボチェでは食堂はナムチェなみだったが、個室は裸電球、それも、日本で言えば豆球のような暗さ。廊下には明かりはない。したがって、高山病対策で水を大量に飲んでいるため頻繁にトイレにいくが、ヘッドランプ持参。
 これが、ディンボチェになるとちょっと泣けてくるほど暗くなる。このあたりになると座布団程度のソーラーパネル1枚で電気を作り、それをバッテリーに充電して宿の一日の電気をまかなう。みんなが集う食堂でさえ、夜になると料理の中身が良くわからないほどくらい。かりに半焼けの肉がでてきたとしても、肉の赤い部分は確認できない。しかも、トイレも電気はあるけど、電球がはまっていない。部屋の電気も豆電球なみ。こんなんじゃ何も見えやしない。
 チュクンなるともっと過酷。電気は食堂に豆電球が一個だけ。写真のように人の顔さえ良くわからないほどくらい。部屋や廊下には電球はない。別のロッジでデジカメの電池を充電したが、充電は一時間300ルピー。つまり600円。
 もちろん、カトマンズ、ナムチェ以外は、家電を見たことがない。冷蔵庫、炊飯器、洗濯機、掃除機・・・。なにもない。でも現地の人はだれも不便に感じてなさそうだし、みんな幸せそうだった。発電所もちかくにないし、電線だってない。

【トイレ】
トイレネパールに入るまでは、ネパールの便所は日本のボットン便所のようなところだろうと思っていた。・・・が、実際いってみると、それ以上でもありそれ以下でもあった。便所は大体3タイプあった。
 一つは、写真のように小屋があって、小屋の床にいたが引いてあり、そこに穴が開いているタイプ。どっちを向いて排便していいのもなのか悩むところだが、まぁいい。便所はもちろん個室で人がみているわけではない。反対側を向いて排便していても・・・。面白いのは、なかには枯葉がつんであり、用を足すたびに枯葉を便所の中に落としウンチを隠す(たぶん、ウンチの腐敗を促進とにおい消しの役割があるのだとおもう)。
 二つ目は、20年前タイにいったときのような和式(キンカクシはない)の陶器でできた便器があり、排便後は便所内にある大きなバケツの水を小さな桶で汲み、自分で流すタイプ(もちろん、下水施設はないので、その流されたウンチは近くのどこかに垂れ流しのハズ)。このての便所で、ちょっと躊躇することがある。それは紙の始末である。便器に紙は入れてはいけないことになっていて、用を足すときにしゃがんでいる右前方にポリタンクを二つにわったようなプラスチックの容器があるが、用をたして尻を拭いたあとの紙(つまりウンチのついた紙)はその容器にいれるのである。もちろんふたはない。しかも、ウンチをすればするほど、容器はてんこ盛り状態となり、うんちのついた紙がエベレストのようにつもっている・・・。これには参った。ただ、郷にいらずんば郷に従えということで、そのうち手動水洗用の水おけの水を手でぬらし、尻を洗うようになったが・・・。でもウンコ紙のヒマラヤ山脈には少々ドキドキした。
 3つ目のタイプは、ウンチも紙も同じところに排泄する日本の海の家のような(といても一つ目のような床板に穴があいているタイプ)ボットン便所。ただ、日本と違うのは、寒いのでウンチが凍っていていたり、水はけのよい地面に穴がほってあるだけで水分が日本のようにたまっていない。だからお釣はこない・・・。その分、地域の水が心配だ・・・。きっと糞尿が染みた地下水を料理に使っていたりするのだろう・・・。

 一つ目の便所は、まだ木が生えている地域の便所、二つ目の便所は木のない標高の高いところの便所。三つ目はなんでもありにならざるをえない、人間の生存が極限になる5000m近くの便所。そんな気がした。

 しかし、総じてこの季節の便所は寒いのでにおわない。日本の海の家や、しけたキャンプ場のようにキツイ匂いはしなかった。ウンコの行き先は不安だが、トイレはわりと想像以上にきれいだった。

しかし、電気がなくても、トイレが簡素でも幸せに暮らせる自信ができた!時間と土地があれば、ネパールのロッジのような小屋をつくってみたい!!

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