というわけで、インドネシアで大枠で感じたことを数回にわたって書いてみた。
今回は、小枠で感じたことをまとめてみようと思う。「水」だ。
今回のドロップアウトは「水」といっても過言ではないと思う。確かに、出口のない森を伐り開きながらの道の開設、虫や鳥獣への心配、底なし沼・・・などがあったが、ドロップアウトの一番の原因は「水」に違いない。
あのとき水を午前7時から午後4時半までの活動の中、4リットル飲んだ。しかし、後半は足らなかった。この足らない状況で、43年生きてきた中ではじめての体験をした。普通なら飲んだ水は汗でほとんど出てしまう。だから小便などは出ない。これまでの経験では、そーゆーことだ。ところが今回は違った。
午後からだったが、あれっ、おかしいなぁと思ったが尿意をもよおした。そこで用を足そうとしたのだが、出るのは数滴の小便のみ。尿意があるのに、なぜ小便がでない!しかも、それが15分に一度くらいの頻度で尿意がやってくる。最終的にはパンツの中でリキンでも問題なさそうな感じだが(さすがに万が一のことを考えそれはせずに、いちいち、日常動作をしていた)。
もちろん、のどは渇いている。あせも出ている。しかしなぜか、尿意が・・・。水を飲みすぎならば、尿はでる。水が足りているなら、のどは渇かぬ。なぜだ・・・。
その日、森からかえってしばらくしても、その感が治らなかった。なにか、臓器がおかしい・・・。(あとから考えると、体を冷やすために尿を出すように脳は指令をだしたが、尿がない。そういうことかなぁと思うに至ったのだが、もちろん、私は素人、真実は分からない)。
日本にかえってからインターネットで調べたが、熱中症の手前で、そんな状況になるらしい。・・・なるほど、熱中症かぁ。
しかし、ドロップアウトしたのはその症状の問題ではない。実は、同日、E大学の学生が現地の人(ローカル)と森にはいっていたが、ローカルの人は水を1・5リットル飲むか飲まないかという話を聞いたことが、ドロップアウトの一番のきっかけだ。
つまり、私はローカルの2倍以上の水を私は飲んでいる。この仕事はキャンプで前進する。となれば、水の量が二倍以上必要ということは重さも倍以上。しかし、キャンプでは水は「重り」を担ぐようなものなので、極力減らそうとする。となるとローカル並みの適応力があれば、なんのことはない森も、現在の熱帯への適応状態だと私はついていけない。前にも後ろにも進めないジャングルの中で置き去りの可能性大。これはリスキーだ。
となれば、この仕事、リスクをしょって”日本人”がメインでやる組み立て方ではなく、リスクの少ない”ローカル”をメインに道の開設をするように、組み立てたほうがよい。プロジェクトの全体のリスクも下がるし、付加も少ない。命を懸けるのは、予期できる問題に対して最善の対処したあと不測の事態と仕事を追行して得られるものとを天秤にかけ、最終決断!
私がそこで命をかけるにはもっと準備が必要だった。
乾季のジャングルでは水がない。しかも360度平らなところでは、沢もない。
人間が生存するには厳しい状況だと実感した。まさに”命の水”。
さて、話は一年前のヒマラヤに行った頃の話に戻る。
ヒマラヤの氷河が溶けて、ヒマラヤ発インド洋の川の水量が今後変わってくるとの予測がある。11億人のインドはヒマラヤの水で生きている。しかし、その水が欠乏すれば・・・。人間の生存にかかわる。飲料水と農業用水のドライアウトだ。・・・いまヒマラヤで起きている氷河の融解が、将来えらいことにつながるなと実感した。