2009インドネシア」カテゴリーアーカイブ

インドネシアの山火事・泥炭焼失の原動力?

世界的に由々しき事態。森林減少と泥炭焼失。最初に起きた大面積開発はどうしようもないとして、いま起きている問題はどうにかできないのか?

人づてで聞いた話なので、いい加減なことを言うかもしれないが、私は当地に来るまでこう聞いていた。また読んでいた。

インドネシアでは、大体農作物は自給できているが、米は自給できていない。これから人口が増えることを考えると、米の増産は必須の課題。そこで、未開の地だったボルネオの泥炭湿地林の熱帯林を切り開き、田んぼを作ることにした。それで1990年代の初めから半ばにかけて、大規模開発が行われ森林は消失。ところが、耕作不向きだったため、放棄地と化し、なすすべもなく山火事や泥炭の分解が進み、地球上に膨大な二酸化炭素を放出している。そんなことを聞いていった。だから、山火事は自然発火によるもので、泥炭の分解が進む(水はけがよくなる)のは灌漑網をつくったために水はけがよくなった。だから、過去の工作物によって、現在手がつけられないようになったと。

ところが、その地をいろいろ移動していると、山火事は(根拠はない主観だが)熱帯ジャングル伐採跡の二次林を焼き払い、畑を作るために人為的に火をかけているようにしか思われない。実際、でかいチェンソーを自転車に積んで真っ黒すすけて家に帰ってきたダンナを見た。彼は燃えた跡の整理をしていたのだろう。
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そして燃え残った木を整理して、畑にしているような姿もあちこちにあった。

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また灌漑網は、畑を作るためのもの、また湿地の水はけを良くするものというよりも、伐採による木材搬出のために造られたように見える。運河脇のあちこちには、現場で製材した痕跡が残っている。
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つまり、山火事も泥炭の焼失・分解は現在も人為によって行われている。つまり、犯人がいる話のように思えた。

だから、山火事も泥炭の焼失もやりようによっては、止められる。

・・・かと思ったが、事情はどうやら複雑だった。そして、インドネシアに来る前に聞いていた話、つまり米の生産を意図した開発をしたが、いまでは放棄されているという話は真実ではないと思うに至った。

インドネシアの危機?

というわけで、エルニーニョの今年は特に乾燥し、山火事だらけだった。この山火事、何が問題なのか?もちろん、山火事事態が由々しき事件だが、それ以外に多くの由々しき出来事を”地球”にもたらしている。

その1つが、森林がなくなることによる二酸化炭素の放出。また、泥炭が燃えることによる二酸化炭素の放出。さらには森林がなくなることによる二酸化炭素固定能力の低下。現代は、二酸化炭素で地球は大騒ぎである。インドネシアの森の減少・泥炭の消失は世界的関心事。

そしてさらに輪をかけているのが、森がなくなることによる生物多様性の減少という問題。インドネシアにある、ボルネオ・ジャワ・スマトラ・・・などの島々は世界的にも多種多様な生物の宝庫だそうだ。理由は、先のインドネシアの大地震・大津波のときのように、そのあたりは太平洋プレート・オセアニアのプレート・ユーラシアのプレートの調度接合部。
1地億年前にユーラシアとオセアニアは海で分断されたため、その後、各大陸で生物は独自の進化を続けていた。インドネシアは海洋に散らばる島々だったのが、その後の大陸移動の中でオーストラリアとユーラシアがインドネシアの島々を巻き込んで接近し、氷河期の海水面の低下で大陸と島々の多くがつながり、1億年前に独自進化を遂げた生物がインドネシアあたりで再び交わることなり、今日を迎える。だから、インドネシアにはアジアやオセアニア起源の生物が、熱帯の森を生活の舞台にして生存してきた。そんな経緯があるために、ことに生物多様なのだそうだ。

この多様な生物は、森の減少で生活の場を奪われる。

インドネシアの森の減少は、こういったことで世界的な関心ごとになっている。

じゃぁ、森林の伐採、森林火災、泥炭火災はどうしようもないことなんだろうか。

山火事の内側

乾いた泥炭
正直、泥炭という言葉は知っていたが、どんなものなのかはインドネシアに行くまであまりリアルに考えたことはなかった。しかし、現地に降り立つと、泥炭というでけあって炭だということが実感としてもてた。動画の中の音が聞こえるだろうか。からからに乾いている。

燻る
この泥炭が、いつもとこかで同時多発に燻っている。道路わきでも畦道でも・・・。いたるところ煙が立ち込める。この泥炭は深さ何メートルにもわたって体積しており、昔は水はけがわるかったのでいつもじめじめして、この炭が燃えることはなかったが、森林を切り開き大地が乾けば、もう山火事天国である。

焼野原
泥炭が燃えている、森林が燃えている、といっても、大体燃えているのは、道路から眺めるということが多いからなのかもしれないが、ジャングルが燃えているというよりも、伐採が終わってほったらかしになっていた草地や二次林など、人の入った旧ジャングルが多い。いわゆる点在するジャングルも燃えていることには違いないが、どうやら草地や二次林からの火災が延焼したためにジャングルが燃えるという感じだ。

川から
パランカラヤの町の30キロくらい南に川が流れている。道も橋もない。モーターボートをチャーターして川を80キロくらい下ったが、そこから見る景色も、火事跡につぐ火事跡。果たして、なんでそもそも山火事が起きるのだろう。エルニーニョだけが問題ではないだろう。

インドネシアの山火事

昨日、初秋の日本に帰ってきた。日本は本当にすばらしく素敵なところだと毎度のことながらおもう。

これから何回かに分けて心に残ったことを書くつもりだ。
さて、その一回目。

近年、インドネシアで起きた森林破壊とその後の山火事によって、地球上に放出される二酸化炭素の量が、ある年にはその年に排出された世界の全量の3分の1くらいあったという。今回、その地での二酸化炭素収支をはっきりさせるためのプロジェクトの一環でインドネシア、中央カリマンタン(ボルネオ島の南東)に行った。私の役割は空から地上部分(植物・地面)の計測したデータの処理である。データを処理するだけなら、現場に行かなくてもいいが、やはりデータ処理する上で、不思議な問題にぶちあたったとき現場を知っているのと知らないとでは大きく違う。そのため現場を見ておく、それが私のメインの仕事だ。IMG_0156

この地にあった森林(伐採から免れ残存している木や再生してきた森林も現在もある)は、泥炭という炭になり損ねた植物遺骸の上に成立していた。先の大規模開発では、そこの森林を切り開き、水はけをよくするための運河を行く筋も掘った。おかげで、泥の中の炭は乾き、なにかきっかけがあれば大いに燃える。要するにバーベキューの炭が広大な厚みで広大な範囲で埋まっているところに、どこか一箇所火がつけば炭や草・木を燃やしながら火事が拡大するのだ。
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想像と違っていたのは、日本の山火事の場合、火元がありその火元が大いに拡大して、何百ヘクタールも焼けるということだが、インドネシアの場合、同時多発。規模も大規模から小規模まで。もうどうすることもできない。しかも、木が燃えているだけではなく、地面の下の炭が燃えていて(この場合地面が暑い)、どうすることもできない。そんな規模の火災は想像してもいなかった。それは帰りの空からみても明らかだった。
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そのため、当地ではいつもガスが出たような毎日。滞在したホテルから100mも離れていないところに電波塔があったが、それもかすんでいる。町は晩秋の日本の田園のように、草が燃えたようなにおいが漂う。私が当地を立った日は、風が強く火災に拍車をかけ、飛行機は視界不透明で遅れに遅れた。やっととび立ち、町を見下ろせば、その煙のすさまじさ(日本の県庁所在地)がわかる。日常生活の中で山火事が起きているのだ。
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時に田舎の道では草や木などが燃え車の通行が不能になるくらい。煙が充満しているときもある。
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今年はエルニーニョということで、インドネシアは乾燥し、雨も降らず、森や地面は燃え続ける。太陽は夕焼けにはまだはやいのに、赤い。
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生還

955032e8.jpgいま岐阜行きの電車にのる。
写真のような林の中、ナタを振り回して1時間で400m。それが延々と続き4リットルの水も一日の終りには一滴ものこらなかった。想像を越えた厳しさ。
たいした仕事も貫徹できず悔しいが、とりあえずこの土日はスイッチをオフにしたい。

E大学隊無事帰還

今日の夕方真っ黒になりE大学隊は帰還した。生還という言葉がピッタリだ。途中で水がなくなり、夜の山のなかを二時間歩いて引き返したという。喉の渇きで、今死ぬより、あとで死んだほうがいいと、途中ドブの水を飲んでしのいだという。凄惨…。多分それにあの状態で着いていけば、私は倒れていただろう。

完敗

先日熱帯の森を体験しこれ以上無理だとはんだんし、調査からドロップアウトした。E大学の学生らはいま三泊四日でジャングルに出かけた。
昼間は40度近くあり風もなくミストサウナのなかでヤブの開設。日帰りならダウンするまでガンバルことも考えるが、人跡未踏のキャンプは今の自分にはリスクが高すぎる。しかも現地人と同じでブルーシートで雨よけしただけの寝袋だけのキャンプはただでさえキャンプでは眠りがあさい自分には疲労の回復も望めない。

完敗

現地の山火事は相当激しい。いま帰国の算段をしているところだが、勇者達の無事な貫徹を祈るばかりだ。

ジャングル

なんとか無事生還
密生した樹やツルなどをナタで伐りすすみながら道を工作。一時間で500mも進まない。人生初くらい疲れた。
帰りの車では火柱をあげる山火事で前方が見えないくらいの煙。

感慨深い日

100キロ四方の熱帯林を切り開くこの想像を越えた開発にたいする考えが変わった一日だった。
明日はジャングルを10キロ西に道を切り開く仕事で森に踏みいる。火事・獣・毒へび・アリ・蚊どんなフルコースが待ってるか?できればゴメン被りたい。