一つ目のお話し完了(すません、興奮しています)

今日は、愛知の山奥に出かけてきた。林業の話(森林境界明確化の話)をするためだ。
随分、不思議な研修会だった、と帰りの道中思ったりした。

私の関心は、林業の「産業としての自立作戦」。
ただ、マーケットの動向を考えると、今は何をやってもしょうがないときだ。無理してまで新しい取り組みをするときではない。私はそう考えている。

しかし、国は「儲かる林業」を目指して舵をきった。それを実現する大きな手段として導入されるのが「森林経営計画」。万人に経営計画をたてさせるため、国はこれをたてないと補助金がもらえない仕組みにする。政策を実現させるためのムチ(経営計画)とアメ(補助金)というわけだ。実はこれは矛盾していると私は考えている。

儲かる林業をするということは(政策目標)、補助金をもらわずとも林業を目指すということだ。ならば、それ(儲かる林業を構築したい)を目指せとする一方で、その実現のために儲からない林業を支援する(補助金を経営計画をたてたところに集中)ということは矛盾している。私はそう考えている。(しかし、先日林野庁にいき、そのことをおかしいじゃないかと出稽古してきたら、そのバックグラウンドで起きている実情を理解したので国の方向性は理解した。)だから、儲かる林業を本気で目指すなら(私が目指すこと)、経営計画なんて無視!だ。一番賢いやり方は、のらりくらりと行政に対応しながら、いただくものは頂くこと。生真面目に政策に振り回されるのは気の毒な話だ。私は、現場はそうすべきだと思っている。

今日の研修会は私のその理解と大きく異なっていた。
「林業を自立させるための政策が始まった。だから、そのためには経営計画をたてなければならず、森林境界も・・・。」どうやら本気で研修の主催者は「森林経営計画=儲かる林業」と考えているようだ。

『それは違うだろう・・・』と思ったが・・・。

また、研修会で「スウィングヤーダー・プロセッサー・フォワーダー」という話があった。これをつかうことで生産性があがった。一人あたりの集材量が◯◯立法メートルから××立法メートルになった。だから機械を導入して生産性があがった!
私は質問した、生産性が必要なら、どうして皆伐をせず、列状間伐なのか?この山はどんな山づくりのビジョンを持っているか?会場の人も加わり情報交換ができたが、大方の意見は「今はきっても儲からないから主伐は行わず間伐をして出している」、どんな森づくりをするか?なんという考えはまだない(ちょっと極端だけど、そんなニュアンスを感じた)。

また生産性のデータを比較するときは、その林分から収穫する本数で比較しないといけない。なぜなら、同じ10本を収穫するのでも、小さい木でも大きな木でも収穫デマは大してかわらないので、大きな木を収穫したほうが生産性が高く数字上映る。ニュージーランドの林業をみてそう思った。彼らの生産性は日本の10倍以上だが、木の大きさも10倍以上。一日の収穫本数は日本と大して変わらなかった。

先の私の「生産性を全面に出して説明するならどうして皆伐で生産性をあげようとしないのか?」という質問に対して、その回答は「今は材価が安く、育林に260万くらいかかってきた」だから「いま250立法を出しても所有者は儲かる計算にない」「したがって、いまは主伐をせず手入れをする時期と考えている」といことだった。

この説明、よく聞く話だ。私はそれは違うと考えている。260万の育林費を所有者は出したのか?半分以上、もしかしたら3分の2以上は補助金が入っているではないか。国際マーケットで流通する世界の収奪林業(生えている木を伐る林業;木のコストはゼロ:収奪林業の原価=収穫コスト)に対抗できるよう、高い人件費の日本での育林費を国が肩代わりするため(植えて収穫する林業には、木にコストが発生している:育林林業のコスト=収穫コスト+育林コスト)補助金が投入されているのではないのか(日本の主たる産業を二次・三次産業とするよう政治決断がされた代償として)?だから、育林費が260万という原価の考え方は、間違っている。

林業業界、保育なのか、儲かる林業なのかもっとはっきりさせて考えないと、錬金術探しをしているだけで、政策を実行に移す側がその理解では、現場は政策に翻弄されて消耗してしまう。そんな風に私は考えている。

施策は一体何をみているのか?いま、分かっていることは、現場は市町村をみて、市町村は県を見て、県は国を見て、国は世の中を見て・・・。なんだかこの伝言ゲームどこかで変なことになっているように思う。現場が困らないためには、もっとみんなが勉強しないと、と思った研修会だった。

※追伸
前述、「今はきっても儲からないから主伐は行わず間伐をして出している」ということならば、それは間伐を肯定する理由にはなるが、生産性重視を肯定する話(私が彼の話が生産性があがったから良かったということに終始していたので、私は質問しただけだ)にはならない。あくまで生産は販売とセットだ、と私は思う。市場が熟していないなら(私のマーケット分析では現在市場は熟していない)、伐り捨て間伐で放っておくほうが業界のためだと思う。
一方で、機械化を肯定する理由が、少しでも、所有者に還元したいからという理由で材を出すなら(儲かりはしないが小遣いにはなるという話はたしかにあったので)、じゃぁ小遣いを得るために、借金して、借金させて林業機械を導入しているということか・・・?そうではないだろう・・・。

勧めるがわも、乗っかるがわも、すべて世間のオモテウラを理解し、あうんの呼吸でやっている話なら、安心なのだが、どうも実情そうではなさそうで・・・。だから、私を含めてみんなもっと勉強しないといけないと思った。

10 thoughts on “一つ目のお話し完了(すません、興奮しています)

  1. dream

    いつもお世話になります。
    FB世界も大盛況ですね。
    ブログ拝見しました。
    確認ですが、竹島さんの目的は、「森林境界明確化」の話をするために講師として出席したのに、内容は「経営計画と儲かる林業」の話題になってしまった。 と理解してよろしいですね。
    「儲かる林業」って言っているけど・・・
    誰が儲かるのか?どの時点で儲かるといえるのか?ちょっと視点がずれているような気がします。 
     森林経営計画を立てるのは、森林組合や林業事業体です。そして、その事業体は、国が推進する集約化、機械化などの取組みをしながら、木材代金と補助金で採算が合うように考えることになります。 上手いいけば森林所有者に還元することになります。
    さて、ここで誰が儲けているのでしょうか?
    森林組合や事業体は、必要経費や補助金を優先して確保するので、リスクは最小限に抑えられ業となりうるでしょう。(最初から採算が合わないと分かっていればやらない)
    いわば、儲けているといえると思います。
    一方、森林所有者からみれば、還元を受けた時は儲けたと感じるでしょう。
    しかし、残った森林を見てみると、無残なものです。 森林組合、業者のやりたい放題・・・ コストを下げるために、機械による荒っぽい作業(地肌がめくられ、残材が散乱し、立木は傷だらけ・・・)や、材積や売上を確保するために、良質な木(太い木、通直木)を優先して伐ってしまっている。
    これは、極端な例ですが、実際にこれに近い状況が見受けられます。
    「林業でいう儲ける」は、短期的な収支でなく長期的に考えるべきだと思っています。
    また、金銭的な価値感だけでなく、精神的に豊かになることも「儲け」の一部だと考えています。
    私も、「儲かる林業」=「森林経営計画」ありえないと思います。 ある程度の計画や目標は必要ですが、数値目標だけで十分だと思います。
     次に続く

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  2. dream その2

    前の続き・・・
    機械化して生産性を上げれば、少ない人数で、大量生産が可能になります。
    企業的にみれば、最良の状態です。
    国の指標である自給率50%達成の有無はともかく、言えることは木材価格の上昇はないだろうと考えています。
    そして、常に需給と収支のバランスをとりながら木材生産をすることになるでしょう。
    となると、永遠にコスト削減を追及し続けることになり、いつも犠牲になるのは、現場で働く従業員と森林所有者です。
    生産性というのは、一事業地の収支でなく、地域全体の資源量と生産量と労働力のバランスを考える必要があると思います。
    森林組合も事業体も森林所有者も一体となって地域の林業に向かう体制が重要だと思います。
    もうすでに、森林所有者は置き去りにされてしまっています。
    そして、経済優先が、山を愛する気持ちを失わせてしまいました。
    林業は、森林所有者、森林技術員・・多くの人の手がはいることで、維持管理が持続されるものです。 そして、その地域社会が形成され、産業として維持されるものです。
    私は、機械化を否定しないが、「いい山づくり」「造材技術」「雇用」「地域社会」を優先することを信念としてきました。 これからもそうします。
    そして、森林所有者の「心」を取り戻し、そして、若い技術者を輩出し、そして、物心共に豊かな地域社会をつくり上げたい。
    とは思いつつ、現状は補助金に頼るしかないのが情けない。
    国策に合うように組み立てしつつ、のらりくらりと対応しながら、いただくものは頂くしかないようです。  (言葉拝借(^^;)
    内容が支離滅裂になってしまい、意見になりませんが・・・・  よろしくお願いします。
    S.Y

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  3. 竹島

    dreamさん コメントありがとうございます。感激です。またお時間を割いてしまい申し訳ありません。
    只今山形に向かって移動中につきおはなしつづけられず残念ですが、まずは取り急ぎお礼まで。

    返信
  4. takejima

    どきどきしながらお待ち申し上げておりました。
    いま山形につきました。
    では、24日に議論の続をお待ちしています。

    返信
  5. takejima

    (その1)
    Dreamさん こんにちは。
    確認に件ですが、私が呼ばれた目的は多分「お前も愛知県にいるなら愛知県の森づくりに貢献せよ」だと理解しています。それに関して興奮していたわけではないです。
    興奮の原因は1つあります。
    1 機械化を推進するトークの筋がおかしいと感じたことです。
    2 講習会の構成が聴衆にとってまったくわかりにくいものだと感じたことです。
    1 機械化のトークについてです。
    たとえば、林業労働者が減少してくる一方、手入れ遅れの林分が増加している。これを何とかするには、所有者を明らかにして、少ない人でも間伐面積を増やすことができるよう機械化の導入をする。だから、森林境界明確化を進め、機械化をすすめる。という話なら私は理解できます。そして、そのストーリで機械化のモデルを評価するなら、機械化をするお陰で、これまで10ヘクタールに何人工かかっていた工期が、○○人工に減少した。機械化を推進すれば、なんとか労働人口減少と間伐推進を同時に実現できる。だから、皆さん機械を入れましょう。
    これなら私は理解できます。
    ところが、儲かる林業をするために、森林林業再生プランが立ち上がった。森林経営計画を立てて、儲かる林業を推進しよう。だから、境界明確化をして、機械化をしよう。機械化をすると、こんなに生産性が上がるからね。
    でした。

    返信
  6. takejima

    その2
    だから、私は生産性が目的なら、どうして皆伐を考えないのか?(ここまでは興奮しませんでした。岐阜のように皆伐は推奨しないのか?と思ったわけで・・・)
    そしたら、その問いかけの返事が、「皆伐非推奨」「長伐期施業の森づくり」などの哲学があるかと思ったら、「返事に窮し」「いまは伐っても儲からないから間伐だ」です。それで興奮したのです。
    現場に施策を推進しようとする者の、まるでコピペしただけの推進音頭。その情熱のなさ、真剣味のなさにガッカリしたわけで、悲しくなりました。

    返信
  7. takejima

    その3
    わて、私が目指したい「儲かる林業」というのは
    儲かる=売上ー原価でプラスがでるということです。しかも、努力次第でプラスがより大きくなる、そんな林業のあり方を描きたいと思っています。もちろん、原価の中には補助金はありません。
    そして、儲かる林業社会をつくり、過酷な労働をしてくださっている(いつも危険と隣り合わせの卒業生らの顔が浮かびます)現場の労働者が、労働に見合った対価を得られる世の中を提案したい、です。
    現在、私が見ている世の中(スマートフォンの試行錯誤などをしながら)の流れでは
    1 長期的に材価は上がる。ただし、それには2つのキッカケのうちどれかが必要。もしも、短期的に材価を上げたいのなら、市場の材価を上げるなら、材を出さなくすること。直送の材価は市場の材価と違って上がらない。
    2 あつかう山林の規模によって「儲かる林業」のカタチは違う。小は小なりの設け方、中は中なりの設け方、大は大なりの・・・。ただし、みんながその生き残りで勝者になるわけではない。
    などを思っています。
    こんどDreamさんのところで是非、そのあたりをプレゼンさせてください。3月中にうかがってもよろしいでしょうか?

    返信
  8. dream

    山形出張お疲れ様でした。
    興奮された内容わかりました。
    是非、こちらもお話を伺いたいと思います。
    日程は、19日、23日以外であれば、可能です。

    返信
  9. takejima

    deamさん
    ありがとうございます。是非、出稽古させてください。後日日程調整してご連絡いたします。

    返信

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